その他
「みなし陽性」って何ですか?

なぜ、「みなし陽性」の場合は、改めて検査をしないのですか?

おそらく、多くの方が誤解されていると思われるのは、
「PCRや抗原検査が陰性でも、感染していないことの証明にはならない」
ということです。

なぜ、そうなるかというとほとんど全ての検査は間違いを起こすからです。感染している人をしていないと判定したり、してない人をしていると判定したりします。
感染している人を正しく「感染している」と判断する割合を「感度」といいます。
感染していない人を「感染していない」と判断する割合を「特異度」といいます。

新型コロナウイルスの検査の感度・特異度はおおむねこのようになります。

特異度はどちらの検査も素晴らしいですが、感度には問題があるのがわかると思います。

実際に感染している10人にPCRをすると7人は陽性となり診断できますが、3人は陰性となり見逃します。

一方、感染していない10人にPCRをすると99.9%の確率で全員陰性となります。

たとえば、100人中10人が感染している場合に、全員にPCRをかけると、感染していない人はほぼ確実に陰性となりますが、3人の感染が見逃されます。

検査には上記のような限界がありますから、見逃しはやむを得えませんが、この3人という人数をどう思われるでしょうか?

新しい感染の波が来て感染者が増えてくるような時期には、対象者の70%以上が感染者という状況が日常になってきます。

70%が感染しているというのは極端だと思われるかも知れません。しかし、新しい感染の波が来ると発熱外来での検査陽性率は簡単に70%を越えてきます。この70%というのは全人口が対象では無く、「新型コロナ感染が蔓延した状態で、発熱や咳、喉の痛みなどがあって病院に来る人」が対象だからです。基本的に感染が疑われる人しか来ません。

100人中70人が感染している場合に、全員にPCRをかけると、感染していない人はやはりほぼ確実に陰性となります。そして、49人は正しく診断されますが、なんと21人もの感染が見逃されてしまいます。

100%が感染した集団にPCRを行ったときの検査陽性率が70%ですから、事実上、全員が感染していると想定した方がよいぐらいなのです。

オミクロン株以降の新型コロナウイルスの感染力は非常に高いのです。

感染者との濃厚接触があり、発熱や風邪症状があって発熱外来に来るような方では、検査が陽性に出ればもちろん感染していることになりますが、検査が陰性になっても検査の感度が不十分なために見逃しているだけである可能性が非常に高いのです。特に同居して衣食住を共にしているような場合は検査が陰性でもまったくあてになりません。

このような場合は、状況証拠が検査の精度を上まわっているのだと言えます。結局、検査をしようがするまいが新型コロナ感染とせざるを得ません。これが、「みなし陽性」とする理由です。そういう人の検査がたまたま陰性になって、注意深い感染対策なしに活発な社会活動を続ければ、ウイルスをばらまくことになるのです。

濃厚接触がなく発熱外来を受診し、検査が陰性になった人では、可能性はやや低くなりますが、それでも新型コロナウイルス感染でないことは証明できません。この場合は、休業して自宅安静とすることが困難でも、最低10日間は、厳格に他人との濃厚接触を避けたほうがよいと思います。

注)濃厚接触についてはここを参照ください。